Anckarsäter H, et al., 2007, “Prevalences and configurations of mental disorders among institutionalized adolescents.” Developmental neurorehabilitation, 10(1):57-65.
スウェーデンのギルバーグのグループによって書かれた論文。論文中に登場するSiS1、SiS2とは青少年処遇のためのプログラムである。
調査は2002年1月から少なくも2002年まで収容される青少年が対象になっている。人数はSiS1の60名SiS2の70名、計130名である。年齢は12.0~20.3歳まで。
105名(81%)が男性、25(19%)が女性である。診断基準はDSM-IVが使用されている。
53%が何らかの精神障害の診断に該当した。
全体の39%がADHD、15%が広汎性発達障害(自閉スペクトラム症)、8%が知的障害、7%精神病性障害だった。
この調査は全数調査であるため、重大な犯罪を行ったスウェーデンの青少年の精神疾患が把握できる。
半数強に精神疾患があり、4割がADHD、15%が自閉症だった。
診断は併存しており、ADHDと自閉症を重複なしで数えると59名(45.4%)であった。
つまり、スウェーデンの青少年の犯罪の45%程度にはADHDや自閉スペクトラム症が関連しているということだ(原因と断じることはできない)。
SiS1の診断
診断名 | 人数 | % |
---|---|---|
小児自閉症 | 0 | 0% |
アスペルガー症候群 | 3 | 5% |
特定不能の広汎性発達障害 | 10 | 17% |
学習障害 | 7 | 12% |
ADHD | 11 | 33% |
チック | 9 | 15% |
うつ病 | 13 | 19% |
精神病性障害 | 3 | 5% |
言語障害 | 1 | 2% |
パーソナリティ障害 | 0 | 0% |
SiS2の診断
診断名 | 人数 | % |
---|---|---|
小児自閉症 | 1 | 1% |
アスペルガー症候群 | 0 | 0% |
特定不能の広汎性発達障害 | 6 | 9% |
学習障害 | 4 | 6% |
ADHD | 31 | 44% |
チック | 1 | 1% |
うつ病 | 4 | 6% |
精神病性障害 | 6 | 9% |
言語障害 | 1 | 1% |
パーソナリティ障害 | 3 | 4% |
スウェーデンの未成年の処遇
SiSとはStatens institutionsstyrelse(国務省理事会)のことである。1) 特別ユースホーム(SiS särskilda ungdomshem)、2) クローズドユースケア(Sluten ungdomsvård)、3)薬物乱用のケア(Missbruksvård på LVM-hem)の3事業から成り立っている。
特別ユースホームは薬物乱用、犯罪行為、またはその他の社会的に悪化する行動(例えば売春行為)などを行ったが対象であり、クローズド・ユース・ケアは強盗、虐待、殺人、虐殺、麻薬犯罪、性犯罪などの犯罪を行った15〜17歳(犯罪時)の若者であり、薬物乱用のケアは基本的に成人の薬物乱用者が対象になる。
論文中ではSiS1は12–16歳が対象であり、SiS2は15–20歳かつ男性のみを対象としていると書かれている。クローズドユースケアでは、2015年実績で女性が1人含まれており、この10年の間で性別の限定が外れたのかもしれない(https://www.stat-inst.se/var-verksamhet/sluten-ungdomsvard-lsu/, スウェーデン語)。若年犯罪者法(young offenders act)は刑事責任は15歳から生じ、成人である18歳までの間の処遇のために導入されたとのこと。