2017年11月15日、福井県勝山市において、松山としさん(84)が頭部を金づちで殴られ殺害された事件。犯人の室坂一美は被害者の娘の元夫であり、自閉スペクトラム症とされている。
被告人は,平成21年8月頃に妻であるBとの離婚に応ずるに当たり,被告人が長い間無職であったため過去の退職金等は使い果たしたとBから説明された が,Bがうそをついて財産分与をしないなどと勘ぐって恨みを持ち続け,やがてこの恨みを晴らすために同人を殺したいと思うようになった。
離婚をしたのは事件から8年前であり、その間、憎悪を増幅していたのではないかと推測される。強い猜疑心を持ち、そのことを8年間憎悪し、殺人に至るというのは病理性があるとしか言えないだろう。
当初は元妻を殺害するつもりで住居侵入をするが、元妻は不在であった。離婚当時、元妻の母親が元妻に離婚を後押ししたことから、元妻の母親に対しても憎悪を抱いており、殺害しようと考え、在宅していた松山としさんを殺害したという。
被告人は生来自閉症スペクトラム障害等の発達障害の傾向を有し,これを基盤として猜疑的思考を主体とするパーソナリティ障害を形成するとともに,幼少から父の母に対する暴力を目の当たりにしてきたことも手伝って,暴力により問題を解決しようとする傾向を吸収したものであり,被告人が長年にわたりBを疑い恨みを募らせた上,その解消のために殺人という方法を選択したことには,上記のような被告人の責によらない事情も影響しており,その点では同情の余地がある。しかし,発達障害についてはもともとその傾向があるにとどまる上,被告人は,相当期間にわたりそれなりの社会生活を営むことができており,失職後,自由気ままな生活を続けて自ら孤立を深めたことによって前記障害の傾向を強めるに至った面もあるといえることを踏まえると,大きく同情することは難しい。
引用は判決文より。