パッション3/10
窓外の粉雪を目の前にして学ぶ子どもたち

「音楽」の授業参観は合同学級で進められた。
五人の生徒全員の机が窓を前に並んでいる。窓から切り取られた空が見える。教室の天井には銀河鉄道が走る星座や星雲が一面に描かれ(これらは卒業生が制作)、壁には詩や俳句が所狭しとはってある。
宮沢賢治、草野心平、山村暮鳥、一茶、子規、啄木、山頭火・・・錚々(そうそう)たるメンバーが一同に会している様で、こちらまでがわくわくしてきた。それぞれの詩や俳句を、2年生の子どもまでがすらすらと暗唱しているではないか!
「さあ、今日は何から歌おうかなぁ」と井出先生。先生のピアノは決して上手だとは言えないが、それをはるかにしのぐ勢いの、子どもたちの美しい歌声に圧倒された。シューベルトやモーツァルトの歌曲など、かなりハイレベルの曲まで、子どもたちは無心に楽しく歌ってくれた。


 山あれば山を観る
 雨の日は雨を聴く
 春夏秋冬
 朝(あした)もよろし
 夕(ゆうべ)もよろし


子どもたちが歌うこの分校歌は山頭火の詩に井出先生が曲をつけたものだ。何と粋な分校歌なんだろう!窓の外では白いものが舞いはじめた。
  「あっ、雪や、雪や」
 「雪、雪、止むな、止むな」と子どもたち。
 「そんなに雪が気になるかぁ、しっかり歌ってや」と井出先生。

こんな授業なら、誰もが、きっと心から歌うことが好きになるはずだ。実際に、卒業生の中には合唱団に入って活躍している子どももいると言うことだ。