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不登校の典型像は時代共に変化する
1990年代 不登校運動
2000年代 ひきこもり問題
現在 いじめ、子どもの貧困
その時話題になったトピックとひきこもりは関連付けて語られる。
実際、どの程度の不登校がそれぞれの現象との関連があるのか?
脱落型不登校とは、家庭の劣悪な社会経済的要因(低収入など)に起因して怠学傾向や非行傾向の見られる不登校(保坂 2000)
仮説1:脱落型が不登校の大半である
脱落型不登校を扱う論文でスクール・ソーシャル・ワーカーの必要性が説く傾向。
現在はスクール・カウンセラー(臨床心理士等)が配置されており臨床心理学の領地。貧困と不登校を結びつけることによって、社会福祉士の就職先ができる?
一般対照群に対しての精神疾患罹患
不安型不登校(Pure Anxious School Refusal)3.0倍
社交不安障害11.0倍、全般性不安障害2.9倍、特定の恐怖症11.0倍、社会恐怖6.6倍、うつ病10倍
怠学型不登校(Pure Truancy)3.6倍
うつ病3.9倍 、反抗挑戦性障害が3.8倍、素行障害8.4倍
仮説2:脱落型の方が精神疾患が少ない
不登校の5年後に就業・就学をしていない者は18.1%(文部科学省 2014)
公立中学3年生(2006年時)に「学校嫌い」で年間30日以上欠席した者の5年後の追跡調査。
中学卒業後の5年間に「何もしていない」生活を送ってきた者が8.3%
「現在の状態」として「就労・就学ともにしていない」という者18.1 %
現代教育研究会 (2001)も同様の結果を示している。
不登校の2割程度がひきこもりに近い状態になっている。
不登校とひきこもりの規定要因は異なる(井出 2014)
仮説3a:不登校は性質の異なった群からなる。
仮説3b:ひきこもりに発展する不登校は一部。
仮説1:脱落型が不登校の大半である
仮説2:脱落型の方が精神疾患が少ない
仮説3a:不登校は性質の異なった群からなる
仮説3b:ひきこもりに発展する不登校は一部
問11と問12では小・中学校での体験を聞いている。マルチアンサー形式で、はい/いいえの2値で回答。
| 質問 | 質問文 |
|---|---|
| Q11_1 | 友達とよく話した |
| Q11_2 | 親友がいた |
| Q11_5 | 友達をいじめた |
| Q11_6 | 友達にいじめられた |
| Q11_9 | 学校の勉強についていけなかった |
| Q12_13 | 両親が離婚した |
| Q12_18 | 経済的に苦しい生活を送った |
| 潜在変数 | |||
|---|---|---|---|
| 連続 | カテゴリカル | ||
| 観測変数 | 連続 | 因子分析 | 潜在プロフィール分析 |
| カテゴリカル | 項目反応理論 | 潜在クラス分析 | |
潜在クラス分析が可能なソフトウェア一覧。今回はMplusを使用。
| Software | 分類 | BLRT | 共変量 | 抹消結果 | 料金 |
|---|---|---|---|---|---|
| Mplus | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 有料 |
| SAS | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 有料 |
| Latant Gold | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 有料 |
| Stata | 〇 | 〇 | 〇 | ? | 有料 |
| LEM | 〇 | × | 〇 | × | 無料 |
| R(poLCA) | 〇 | × | × | × | 無料 |
すべてを試していないので、情報は不完全。
VARIABLE: NAMES = q11_1 q11_2 q11_5 q11_6 q11_9
q12_10 q12_13 q12_18;
CATEGORICAL = q11_1 q11_2 q11_5 q11_6 q11_9
q12_10 q12_13 q12_18;
CLASSES = c(4);
ANALYSIS: TYPE = MIXTURE;
ESTIMATOR = MLR;
STARTS = 200 10;
STITERATION = 50;
OUTPUT: TECH14; !BLRTの出力
| 2class | 3class | 4class | 5class | |
|---|---|---|---|---|
| \(ΔG^2\) | 84.34 | 46.296 | 30.838 | 16.411 |
| \(Δd.f.\) | 8 | 8 | 8 | 8 |
| BLRT \(p\) | 0.000 | 0.000 | 0.000 | 0.333 |
| BIC | 2392.105 | 2391.306 | 2405.963 | 2435.048 |
| Entropy | 0.821 | 0.832 | 0.906 | 0.774 |
クラス構成割合
| class1 | class2 | class3 | class4 | |
|---|---|---|---|---|
| クラス構成割合 | 0.081 | 0.166 | 0.193 | 0.559 |
指標(顕在変数)の条件付き応答確率
| class1 | class2 | class3 | class4 | ||
|---|---|---|---|---|---|
| 脱落型 | いじめ型 | 非社交型 | 普通型 | ||
| q11_1 | 0.853 | 1.000 | 0.000 | 0.859 | 友達とよく話した |
| q11_2 | 0.768 | 0.874 | 0.000 | 0.687 | 親友がいた |
| q11_5 | 0.562 | 1.000 | 0.099 | 0.000 | 友達をいじめた |
| q11_6 | 0.769 | 0.769 | 0.504 | 0.323 | 友達にいじめられた |
| q11_9 | 0.301 | 0.535 | 0.383 | 0.288 | 学校の勉強についていけなかった |
| q12_13 | 0.712 | 0.108 | 0.222 | 0.139 | 両親が離婚した |
| q12_18 | 1.000 | 0.042 | 0.141 | 0.081 | 経済的に苦しい生活を送った |
仮説1:脱落型不登校が大半である
結果
考察
仮説3 ひきこもりと関連がある不登校はどのようなものか?
カテゴリカル変数の分析法のまとめ
| 観察された独立変数 | 潜在する独立変数 | |
|---|---|---|
| 観察された従属変数 | ロジスティック回帰分析 | 共変量を伴った潜在クラス分析 |
| 潜在する独立変数 | 抹消結果を伴った潜在クラス分析 | カテゴリカルSEM |
潜在変数を独立変数にした分析は困難
分析法は発展途上。現在の最良の方法は下記の3つ。
抹消結果が連続変数の場合
抹消結果がカテゴリカル変数の場合
統計パッケージ
Mplusのコードは下記のように書く。抹消結果のひきこもりは2値変数なので、DCATを使用する。 "Auxiliary= variable(DCAT);"と書く。連続変数の場合はDCATのところをBCHにする。
VARIABLE: NAMES = hiki q11_1 q11_2 q11_5 q11_6 q11_9
q12_13 q12_18;
CATEGORICAL = q11_1 q11_2 q11_5 q11_6 q11_9
q12_13 q12_18;
CLASSES = c(4);
Auxiliary = hiki(DCAT); ! categorical distal outcome
ANALYSIS: TYPE = MIXTURE;
ESTIMATOR = MLR;
STARTS = 200 10;
STITERATION = 50;
クラス3(非社交型)がオッズ比が4.20と高く、95パーセント信頼区間をから有意に関連があることがわかる。
| Class | Odds Ratio | S.E. | 2.5%CI | 97.5%CI |
|---|---|---|---|---|
| class1 | 0.346 | 0.046 | 0.020 | 6.023 |
| class2 | 1.164 | 0.634 | 0.400 | 3.387 |
| class3 | 4.198 | 0.072 | 1.730 | 10.188 |
| class4 | 1.000 | 0.023 | 1.000 | 1.000 |
クラス3(非社交型)は他のクラスとの比較をしてもひきこもりとの関連は有意であった。
| Chi-Square | P-Value | |
|---|---|---|
| Overall test | 9.483 | 0.024 |
| Class 1 vs. 2 | 1.146 | 0.284 |
| Class 1 vs. 3 | 9.303 | 0.002 |
| Class 1 vs. 4 | 1.208 | 0.272 |
| Class 2 vs. 3 | 5.214 | 0.022 |
| Class 2 vs. 4 | 0.072 | 0.788 |
| Class 3 vs. 4 | 7.229 | 0.007 |
仮説2:脱落型の方が精神疾患が少ない
検証仮説:
不登校のクラスによって現在の精神症状に差がある。脱落型に精神症状がある者が少ない。
問29 現在の精神症状の項目。該当するものに〇をつける。2値データ。
結果は別紙。
潜在クラス分析で不登校の類型化を行った。
自らの主張や社会問題の流行に影響を受けない形の整理を行った。
精神疾患・ひきこもりとの関連との関連があるタイプが判明した。
仮説1:脱落型が不登校の大半である
→棄却。 不登校の8.1%。
仮説2:脱落型の方が精神疾患が少ない
→ 棄却。 精神疾患の種類が異なる。
仮説3a:不登校は性質の異なった群からなる
仮説3b:ひきこもりに発展する不登校は一部
→ 支持。
ひきこもりと関連があるのは、小・中学校時代に社交性がなく友達がいないタイプの不登校。